2026-7-17
尾田栄一郎に「急に具合が悪くなる」を見ていて欲しい。ワンピのキャラクターは巻数を経るごとに体つきが変わっている(ゾロやサンジなどのいわゆる「普通」体型の人はそうとは限らないけどね)。大柄な人間は総じて足が細く、上半身がでかい。もはや2メートルに収まる人間の方が少ない。サイボーグのフランキーやそもそも肉がないブルック。女性の体の書き方を読者に聞かれて、○ふたつと×かけば終わりと答えていたこともある。悪魔の実の「覚醒」という設定は、からだの外側にある無機物を自分のからだの一部とみなす。
ルフィはそもそもの設定が「ゴム」で、のびた腕はほとんどたった二本の線であらわされている。加えてニカ化した体はトムとジェリーだし、「人間的」な体からはどんどん逸脱している。トムとジェリーっぽい体が自由かというと、懐かしさや作者自身の既知の「面白」の感覚によるところが多く、結構記号的。
登場人物たちの肉体のリアリティはほとんどない。怪我の痛みも感じられない。ほぼ最初の敵がバギーというバラバラ人間だったのもあり、体が体という形状を失うことが繰り返し生き生きと描かれる(好きなんだろうなあ、そしてその気持ちは結構わかる)。
実写ワンピを見ていたらバクバクファクトリーがバイオハザードの的ばりにグロテスクに表現されていて、改めてこの設定(複数の人間の合成)のえげつなさに気がついた。
体が人間性を失っていくにつれて(島と同一化した敵がいるように/そして、クルーたちが一律のリアクションしかとれなくなったように)、体は固有性を失い、どんどん外側へ外側へ広がっていって際限がない。スナスナやモクモクしかり、自然系は基本的に宙に浮く。境界を失っていく。
「急に具合が悪くなる」での足ツボマッサージって、相手の体を認識すること+自分と相手の境界を認識することでもあるような気がしている。ちゃんとそこにいるし、その相手が肉体的には自分を侵してくる存在ではないことを確かめる。ソフィーが「プロの仕事を舐めるな」(大意すぎる)と言ったのは患者/看護師(介護士)の境界が崩れることを恐れていったことで、そのリスクは理解できる。しかし、マリーが求めていたことは、個をきちんと把握した上で、動線を混ぜることだった。
個であることを自分自身が請け負わなくてはならないけど、そのほうがきっと良い。
島人間は正直ちょっと面白い。大陸vs大陸みたいになってっちゃうのかな。vs海とか。漫画のドラマとしては絶対に人間に立ち返ったほうが面白いんだけど、1m〜30mくらいのサイズの人間たちが一堂に会して会話しているコマとか変すぎて嬉しい。でもやっぱそれぞれ個人個人がもっとちゃんと存在してほしいよ。