盲腸の静かな夕べ

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日記:嘘

 濱口竜介の『偶然と想像』を一昨日にみた。とてもポジティブなメッセージをうけとって、大変嬉しい。「あったであろう」自分の人生を捨てて歩んできたことを、とても肯定的に捉えられる気がして、よかったのだ。映画をみるときは、撮り方がどうよかったとか、演技が、とか、それは本作にとってもとてもとても重要なことではあるのだが、まずはひどく励まされた、というのがさしあたり私にとっては大事だ。

 その次の日(昨日だ)のクリスマス・イブ、『Smoke』をみた。『Smoke』はこれまで2度はみているのだが、なにせ1回目は小学生の時だったりして、内容はあまり覚えていなかった。今回は『偶然と想像』をみたあとだったので余計響いた。本名も知っている上で、偽名で名前を呼び続けるポールたちのしぐさが嬉しい。嘘であってもいいと思うこと、嘘を信じること、嘘みたいなことが事実であること、嘘のなかに本当があること、という層がある。映画の中で、登場人物が会話以外に「語り」だすという場面の多さにこれまで意識を向けていなかった自分に驚く。

 『Smoke』をみた日に、『わたしは真吾』をマンガワンのアプリで読み切った。マンガワンは定期的になぜこれを掲載した……という漫画を載せてくれるので、わりと使っている。機械であったはずの慎吾は終盤、記憶の混濁から嘘を真実と思い込んでしまう(正確には、嘘であるという記憶を忘れる)。そこに、真吾の心があることを強く感じた。フィクションは真を語る、こんなにたくさん。
 今週はよく遊んでしまった。

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