盲腸の静かな夕べ

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文体の舵をとれない 3 長短どちらも

ル=グウィンの小説教室、『文体の舵をとれ』の課題3です。


練習問題③ 長短どちらも
問1:一段落(200〜300文字)の語りを、15字前後の文を並べて執筆すること。



一羽足りない、と夜中に妹が起こしにくる。僕はしぶしぶ冷たい床に足を下ろす。妹は、もしかして、とささやく。それを無視して耳をすました。過度な期待は禁物だ。家中に放たれた鳥は全部で50。単に数え間違いかもしれない。僕たちは慎重に、各部屋をまわった。キッチン、次いで両親の部屋に鳥は多い。バタタタ! と異常なはばたきがきこえる。あっ! と僕たちはリビングへ駆け込む。素足にふわりと感触があった。とびちった羽と、もうひとつ暖かな毛。「帰ってきた!」と僕は叫んだ。大好きな鳥につられてやっときたんだ。おかえり僕たちの太った猫よ。





 文舵の本に載っている実例を多く感じ、結局あまり考えないままに書き出した。実例7の『ハックルベリー・フィンの冒険』のことは頭の片隅にあった。「(……)それでじきに見えてきたのが、川面のひとすじ、つまり水にすじが見えるってことは、流れが早いところに沈み木があるってことで、水流がくだけてそんなふうに、すじができてるってことだから、あとほら、もやがくるくる水面から立って、東の空が赤らんで(……)」主観的な情景描写で、みえているものの記述と、説明をしたい主体の現れが「、」でシームレスにつなげられているように思う。口語に近いこの混乱が好きで、この問題では、毛色の違う文章を混ぜ込んでいこうという気持ちになった。結局整合性をとっていろいろ直したので、まあ、そんなに……。
 テーマ案から夜中のベッドのイメージは借りて、なぜか家が鶏小屋化している光景が浮かんだ。短くすることに苦はあまりなかったが、童話のようにまとまったのはなりゆきで、おそらく最初のイメージのせいではある。
 問2は次回。

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